ブループラネット賞受賞者が会見

受賞会見に臨んだロバート・ジャクソン教授(左)とジェレミー・レゲット氏=2025年10月28日、東京都千代田区
公益財団法人 旭硝子財団(理事長:島村琢哉、所在地:東京都千代田区)は28日、今年のブループラネット賞(地球環境国際賞)の受賞者2人の記者会見を、東京内で開いた。
スタンフォード大学地球システム科学科のロバート・ジャクソン 教授(米国)は、炭素循環研究を通じ温室効果ガス削減に貢献した。カーボン・トラッカー・イニシアティブ初代会長のジェレミー・レゲット 氏(英国)金融市場へ気候変動リスクの織り込みを推進したことがそれぞれ受賞理由として評価された。
会見で、ジャクソン教授は、温室効果ガスのなかでもメタンの削減に力を入れていることに触れ、「メタンが二酸化炭素よりはるかに強い温室効果を持つ一方で、大気中での寿命が約10年と非常に短く、排出量を削減することで、みなさんの人生の中で気温のピークを下げることができる唯一のガスだ」などと述べた。
レゲット氏は、英国のファンドマネジャーが設立した非営利シンクタンク・カーボントラッカーが化石燃料資産の経済リスクを指摘してきた活動を評価したうえで、「投資家に与えてきた影響の結果、化石燃料への投資は大幅に減少したが、決して十分ではない」と強調した。
また、質疑応答では、来日中の米トランプ大統領が気候変動対策に後ろ向きであることへの認識を問う質問が出た。
ジャクソン教授は「環境科学者として最も後悔しているのは、環境問題が政治化されてしまったことだ」と指摘。「地球上のすべての人がよりきれいな水と空気を望んでいる。どの政党を支持しているかは関係ない。しかし、アメリカではある政党だけに関わることにしてしまっている。トランプ大統領へのメッセージとしては、気候変動対策は未来の世代ではなく、今私たちの健康を向上させる。労働者の生産性も向上させるということだ」と述べた。
レゲット氏は「大統領にはどこかで議論に耳を傾ける力があると信じたい。なぜなら、かつて右派の指導者たちを説得し、それがどのように機能するかを見てきたからだ」と語った。具体例として、「英サッチャー元首相は気候変動の早期対応の偉大な推進者だったが、それは彼女に素晴らしいアドバイザーがいて、彼女を説得したからだ」と説明した。そのうえで、「気候変動の交渉はサッチャーを含む数人の指導者によって始まった。これは日本の新首相に対する私の希望でもある。なぜならサッチャーをもっとも尊敬している人物の一人だと、読んだからだ」と述べた。
同賞は地球サミットが開催された1992年に創設された。地球環境問題の解決に向けた理念の構築や科学的理解の深化、人文・社会科学を含む科学技術に根差した対策や実践活動に大きく貢献した個人または組織を顕彰する国際賞で、今回が34回目となる。
