四季の彩り、憩いの人工庭園 朝日新聞東京本社
外国人観光客らでにぎわう築地市場と道を一本はさんだ反対側にちょっとした森があるのをご存知ですか。1978年に森林文化協会を設立した朝日新聞社の人工庭園です。ビル緑化の先駆けともいえるこの庭園のエピソードを集めた同社広報部の社内リポートを紹介します。
梅、桜、ツツジ、ナツミカン、ハナミズキ、アベリア、キンカン、アジサイ、フヨウ、サルスベリ、シャクナゲ、キンモクセイ、そしてボタン。四季折々の花や樹木が楽しめる、朝日新聞東京本社の人工庭園。うち約5180平方メートルの「植物園」は本館が完成した1980年に整備されました。
人工庭園には「地元の人たちや本社を訪れた人たちに花や緑を楽しんでもらおう」(社報2004年8月号)という思いが込められています。植栽のうち一番広いのは本館の築地市場寄りに約3320平方メートル。そのほかに本館2階から8階にかけてバルコニー状の772平方メートル、新館を出てエスカレーター脇の395平方メートルなどがあります。
社員だけではなく、周辺に通勤する会社員が憩い、近くの保育園児も遊ぶ、この都心のオアシスを手入れしているのは、朝日建物管理の管理グループと、造園を手がける西武緑化管理株式会社の東京営業所(東京都豊島区)のみなさんです。
建物管理の担当者によると、一番の困りごとは土が浅いこと。深さは1メートルほどなので、樹木は倒れたり、折れたりしやすいそうです。また、雨などで土が流れてしまうこともあります。樹木の様子を観察して、高くなってきた木は思い切って剪定します。葉が茂って警備カメラの写りが悪くならないように、という配慮をしなければならないこともあります。
珍しい花としてあげてくれたのは、白い花をつけるギンモクセイ、オリーブ。外国人観光客に「ここが浜離宮庭園ですか」と尋ねられたり、セアカゴケグモの騒動の時には「目撃」情報に慌てたりしたことも。
毎日100リットルの袋3つほどの落葉を集める秋は、収穫の季節でもあります。カリンの実は段ボールにいれて、コンコースを通る人に自由にとってもらって「おすそ分け」。柿は甘いのですが、数が少ないため残念ながら配っていません。
枝切りなどの実作業は西武緑化さん。20年以上、庭園の手入れを担当してくれています。月に1回、3~4人で3日間ほど樹木を整え、花壇の植え替えなどをします。責任者の男性は入社2年目に、人工庭園の担当になり、16年にわたって庭を見守り続けています。庭のどこに何が植わっているか頭の中に図面がある、と力強く話してくれました。
手入れをするときに一番に心がけていることは「安全」。
公開空地として、一般の人たちも通行する場所。台風や地震で枯れ枝が落ちてくる、木が折れる、などでけがをすることがないよう、先手、先手で作業するそうです。
樹木が曲がってきて土が盛り上がってないか、葉が茂りすぎて枝が重くなってないか、などをチェック。危なそうな場合は支柱をたてたり、刈り込みを多くしたり、対策をとります。
庭園を美しく保つこつは、混在する植物それぞれをいかすように手入れすること、だそう。
カラスが巣を作らないように枝が密集しないようにしたり、ハチの巣を撤去したりすることもあります。
「やっかいもの」ではあるけれど、自然に生きているものたちが寄ってくるのはそれだけ庭園が自然に愛されているということ、と感じるそうです。
整備当初は、「296種、1万9000本」。この人工庭園に足を踏み入れた際には、ぜひたっぷりの植物にいやされてください。
文=朝日新聞社広報部・伴なぎさ