ロス・グラシアレス-アルゼンチン 青い輝きを放つ壮大な氷河
「ロス・グラシアレス」は、アンデス山脈最南端に位置するパタゴニア地域にある国立公園だ。山、氷河、湖、森林、草原などを含む広大な保護地区となっており、起伏に富んだ地形に広がる豊かな自然はパタゴニアならではのものだ。
南極大陸、グリーンランドに次ぎ世界第3位を誇る巨大な氷河地帯を有しており、標高3500メートル級のアンデス山脈に降り積もる豪雪が常に新しい氷を氷河へと供給しているという。ちなみに、ロス・グラシアレスの「ロス」は英語の「The」に当たり、「グラシアレス」はスペイン語で「氷河」を意味する。
写真は、吸い込まれるような神秘的な青い世界が広がる「ぺリト・モレノ氷河」。ロス・グラシアレスに数多くある氷河の中でも最も動きが活発な氷河だ。氷河の崩落が起きやすいのは、12月~翌年3月の夏季。きしみ音を上げながら湖へとせり出し、やがて行き場を失って崩落する。
見渡す限りの青い氷原に、ゴゴゴゴゴ……と響き渡る轟音(ごうおん)と跳ね上がる飛沫(ひまつ)の迫力は、言葉を失うほどの大スペクタクルだった。加えて、変わりやすい天気だったがそれが幸いし、なんと氷河の上に大きな虹が架かった。こんな光景にはめったに巡り合わないだろう。そこに居た誰もが虹が消えてなくなるまで、この大自然のドラマを目に焼き付けているようだった。
【1981年登録 自然遺産】
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■ プロフィール
Yoshio Tomii/1953年東京生まれ、札幌在住。40年超にわたり地球を駆け巡り、極地を含む132の国と地域を撮影。世界遺産に魅了され、その素晴らしさを伝えるメッセンジャーになりたいと願い、訪れた世界遺産の数は600を超える。写真展、著書多数。(公社)日本写真家協会会員。
公式ホームページ https://www.tomiiyoshio.com
【御礼】
この連載では、私が今まで40年以上にわたって世界中を駆け回り撮り続けてきた世界遺産の中から、とくに自然の素晴らしさが印象深かった場所をご紹介させていただきました。原稿を準備していると、撮影時の情景とワクワクとした気持ちが蘇ってきました。読者の皆様に少しでもその感動を追体験していただけたなら、写真家としてうれしい限りです。最終回となりますが、これからも皆様に作品を見ていただける機会が持てるよう、旅を続けたいと思います。2年間ありがとうございました。
(富井義夫)