バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)―マリ共和国 険しい断崖を彩る強い生命力の緑
マリ共和国中部、サハラ砂漠の南に位置し、ニジェール川流域の低地から標高差500メートルの断崖絶壁がそそり立つバンディアガラ。この断崖の裾野や中腹に1300年ごろに住み着いたというドゴン人が、現在も700余りの集落を形成し、25万人ほどが暮らしている。
彼らは古来、天地創造にまつわる独自の神話体系や信仰を持ち、儀礼や仮面の踊りなどを受け継いできた。かつての旅では観光客向けの仮面の舞踏を見ることができたが、それでも迫力満点であった。ドゴン最大の祭りは60年に一度行われる「シギの祭り」で、次回開催は2027年だという。旅での情景が脳裏に浮かび、また訪れたいという思いに駆られる。
抜けるような青空と、断崖と土でできた建物の茶色の世界に、木々の緑が映える。女性たちが頭に籠を載せ、木々の間をさっそうと歩いていく。またこの辺りに多いバオバブの樹皮は、ロープの材料となったり、実は穴を開けて楽器となったりと、生活と結びついているようだ。
そんな様子を見ていると、辺境の地に暮らしながら独自の文化に彩られた、豊かな日々の暮らしが目に浮かんでくる。
【1989年登録 複合遺産】
(富井義夫)
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■ プロフィール
Yoshio Tomii/1953年東京生まれ、札幌在住。40年超にわたり地球を駆け巡り、極地を含む132の国と地域を撮影。世界遺産に魅了され、その素晴らしさを伝えるメッセンジャーになりたいと願い、訪れた世界遺産の数は600を超える。写真展、著書多数。(公社)日本写真家協会会員。
公式ホームページ https://www.tomiiyoshio.com