世界遺産「生きている地球」

知床-日本 海と原生林の恵みが育む豊かな自然

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 北海道北東端に位置する知床半島。ここは北半球でもっとも低緯度で流氷が観測できる地域だ。オホーツク海と根室海峡に挟まれていて、海流や流氷に影響を受けた豊かな海と手つかずの原生林とが相互に作用し、生物の多様性を育んでいる。

 森にはヒグマやエゾシカなどの大型の哺乳類が高密度で生息する。絶滅危惧種のシマフクロウや、知床半島の固有種であるシレトコスミレやチシマコハマギクなど、希少な動植物が生息・生育し、海はトドやクジラなどの海棲哺乳類にとっても重要な生息地となっている。

 写真の「カムイワッカ湯の滝」は、知床硫黄山から湧き出る温泉がカムイワッカ川に流れ込み、水自体が温泉となっている珍しい滝だ。

 沢登り用の靴を履き、水流に足をとられないように腰を落とし、注意深く川を上へ上へと進む。水温は約30度で心地いい。浅いと思い油断していると、ところどころに深い段差がありヒヤッとする。しばらくすると、川につかった足が少しだけヒリついた。温泉の成分のためだ。

 15分ほど登っただろうか。「一の滝」にたどり着いた。さらに「四の滝」まで続き、上に行くにつれ水温も上がるそうだが、落石の危険があるので、この先へは行けない。

 世界遺産の大自然の中で温泉の流れる沢を登るという、貴重な体験だった。錦秋(きんしゅう)の森に囲まれたエメラルドグリーンの流れを振り返り、シャッターを切った。

 【2005年登録 自然遺産】

 (富井義夫)

 

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 プロフィール
 Yoshio Tomii/1953年東京生まれ、札幌在住。40年超にわたり地球を駆け巡り、極地を含む132の国と地域を撮影。世界遺産に魅了され、その素晴らしさを伝えるメッセンジャーになりたいと願い、訪れた世界遺産の数は600を超える。写真展、著書多数。(公社)日本写真家協会会員。
  公式ホームページ https://www.tomiiyoshio.com

 

 

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