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北東北のクマゲラ、絶滅の危機 生息確認1羽、痕跡も皆無 盛岡のNPO調査

 世界自然遺産の白神山地(青森、秋田県)や森吉山(秋田県)のブナ林から、国の天然記念物クマゲラが姿を消している。盛岡市のNPO法人が調べたところ、森吉山で1羽の生息しか確認できなかった。ここ数年、繁殖も採餌や巣穴を更新した痕跡も皆無といい、関係者は「本州産は絶滅に近づいているのでは」と危機感を募らせている。
 調査したのは本州産クマゲラ研究会(理事長、藤井忠志・岩手県立博物館上席専門学芸員)。4月末から森吉山で過去に確認された繁殖地を計3回、白神山地でも2回、5人ほどのチームで回ったが、森吉山で4月30日にオス1羽を確認した以外、1羽も見られなかった。繁殖期なのに既存の巣穴も使われた形跡がないという。
 研究会はメンバーの観察を含め、1970年代から両地域で延べ49ペアの繁殖と107羽の巣立ちを確認してきた。しかし、白神山地では2009年以降、繁殖も巣立ちも確認できていない。森吉山でも、13年に2羽の巣立ちを確認したのが最後という。
 北東北はクマゲラが生息する南限に近い。岩手の八幡平や秋田の田沢湖周辺などのブナ林にも生息するとみられるが、神経質で繁殖期に撮影などで人が近づくと繁殖しなかったり給餌(きゅうじ)しなくなってヒナが餓死したりすることもある。
 白神山地などで営巣に使われる標高600メートル付近の巨木は、大勢の登山客が訪れるトレッキングコースに近く、登山客やカメラマンに追われている可能性もあるという。また土砂崩落の復旧工事の騒音で、繁殖が途絶えるケースもあるという。
 藤井代表は「北東北のクマゲラ個体群は遺伝的にも貴重。標高が高く西風の強い地域に追いやられると営巣に適した木もなく、繁殖はますます難しい。国や行政は早急に実態を把握して対策を考える時期にきている」と話す。
 環境省も白神山地の鳥獣保護区で毎年、生息調査を実施しているが11年以降、姿も繁殖も確認していない。同省東北地方環境事務所は「白神山地は広く、知見も不足している。来年度は範囲を広げて調査したい」としている。

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