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ブータンは「炭素中立」を維持できるか?
- 2017/06/07
- 地球環境戦略研究機構報道発表
ヒマラヤ山中に位置するブータン王国は、豊富な森林と再生可能エネルギーの水力発電により、森林の二酸化炭素(CO2)吸収量が排出量を上回る「炭素中立」となっている( 2013年のCO2排出量は推定220 万tであったのに対し、森林の吸収量は630 万t)。同国政府は将来にわたって炭素中立であることを目標に掲げるが、近年の経済発展によりエネルギー消費量とCO2排出量の増加が危惧されているため、地球環境戦略研究機関と環境省、国立環境研究所の研究グループは、将来の発展による家庭、産業、交通等のエネルギー需要量とCO2排出量を推計するモデルを開発してシミュレーションを行った。
推計の結果、対策を取らないシナリオでは2050年に温室効果ガスの排出量が吸収量を上回り、正の排出に転じると考えられた。水力が依然として主要なエネルギー源であるが、輸送需要の増加などにより石油の消費量が2012年の8倍以上に増加する。それに対して対策を講じるシナリオでは、温室効果ガスの排出は現状から増加するものの、低炭素対策により排出が抑制され、吸収量が2012年より増加することにより、2050年でも正味で負の排出を維持することが可能となった。削減に最も貢献している対策は森林管理だった。このためブータンが炭素中立を維持しながら発展していくためには、森林管理を中心とした低炭素対策の導入が不可欠と考えられた。
研究グループは今後、エネルギー多消費型の技術依存社会を経ない発展政策の可能性をブータンにおいて考察し、他の途上国での低炭素発展の可能性を導き出すことを考えている。