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サンゴむしばむ温暖化 豪グレートバリアリーフ、「白化」進む

 世界最大のサンゴ礁で有名なオーストラリアの世界自然遺産グレートバリアリーフで、サンゴの死につながる「白化現象」が昨年から2年連続で起き、日本の国土の3分の2近い規模に広がっている。地球温暖化による海水温上昇が主因とみられる。米国が温暖化対策の「パリ協定」離脱を決め、いっそう危機感が広がる。
 ■2年連続で発生
 豪北東部ケアンズから北東に約30キロ、小型の遊漁船に1時間半ほど揺られると、波が穏やかになった。海に入り、海中をのぞくと、魚たちが泳ぐ海底に白く変色したサンゴが点在していた。
 「予想通り、ここでも白化が確認できました」。同行した海洋環境調査会社リーフ・エコロジックのナタン・クックさん(44)が説明した。ここ、ミコマスケイ礁は、今年白化が広がったグレートバリアリーフの中部海域にある。
 白化は、サンゴに共生する「褐虫藻」という生物が、海水温の上昇などによって離れてしまい、サンゴが白色に変化する現象。褐虫藻がつくる栄養分をもらえなくなったサンゴは、褐虫藻が戻ってこなければ死に絶えてしまう。
 クックさんが、緑がかったサンゴを指さした。死んだサンゴを覆う芝のような藻が付き始めていた。
 1998年と2002年にも白化が起きたが、2年連続は初めて。サンゴは死滅しても再び育つが、十分に回復するには10年はかかる。白化が毎年起これば、回復に必要な時間が取れなくなる。
 グレートバリアリーフには約1750種の魚が泳ぐ。オーストラリア海洋科学研究所のリナ・ベイ上級研究員は「サンゴ礁の土台をつくるサンゴを失えば、たくさんの種類の生き物も失うことになる」と話す。
 ■北部は67%死滅
 日本の国土の9割の広さがあるグレートバリアリーフでは昨年3月、北端から700キロまでの北部を中心に白化が広がった。
 ジェームズクック大学にあるオーストラリア研究会議サンゴ礁研究センターが上空と海中の両面から現地調査をした結果、11月までに北部のサンゴの67%が死んだことがわかった。
 今年再調査をすると、白化は北端から1500キロまでの中部海域にまで拡大。全体の3分の2に及んでいた。この海域の海水温が上がる一因となるエルニーニョ現象は98年と昨年には起きていたが、今年は起きていない。
 現地調査を率いる同センターのテリー・ヒューズ教授は気候変動が主な原因とみられるとし、「暑い夏にはいつでも白化が起きる時代に急速に向かいつつある」と語った。
 白化は世界的な現象だ。米海洋大気局(NOAA)は、14年からの3年間で世界のサンゴ礁の70%以上が、海水温上昇に直面したと指摘。日本でも昨年、沖縄県にある日本最大のサンゴ礁域「石西礁湖(せきせいしょうこ)」で白化が広がった。
 ヒューズ教授によると、グレートバリアリーフのような熱帯の海の水温上昇の幅は、産業革命前と比べて0・77度。ただ、昨年初めの夏には、最高気温が平年より約3度高い日が1カ月以上続いた。中部海域では今年はさらに水温が高いという。
 ヒューズ教授は、産業革命前に比べて気温の上昇を2度より低く抑えるという温暖化対策の「パリ協定」の目標が達成できなければ、「サンゴ礁も破壊されてしまうだろう」と警鐘を鳴らす。

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