パリ協定脱退に4年「離脱困難」 「トランプ時代の気候変動」シンポ
- 2017/02/09
- 朝日新聞
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地球温暖化対策に消極的な米トランプ政権発足で、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」はどうなるのか。ビジネスは温暖化対策にどう貢献できるのか。6日、東京・築地で開かれたシンポジウム「トランプ時代の気候変動とビジネス」(主催・朝日新聞社、名古屋大大学院環境学研究科)で議論された。
パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を2度よりかなり低く抑える目標(2度目標)を掲げ、今世紀後半に温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すことをうたう。昨年11月に発効したが、その直後に温暖化対策に消極的なトランプ氏が米大統領選で勝利した。
名古屋大の高村ゆかり教授は、協定脱退は規定上4年かかり、大本となる条約からの離脱も「共和党も賛成して締結した条約で政治的に難しいのでは」との見方を示した。
米大統領選の後も20カ国以上が協定に締結しており「協定の下で対策を進めるという意志ははっきりしている」。中国やブラジルが途上国支援やバイオ燃料のプロジェクトなど強みを生かした取り組みを始めていることを紹介した。
ビジネスへの影響はどうか。各国の金融当局などでつくる金融安定理事会(FSB)は、温暖化による事業への影響を企業が投資家に開示するためのルールを作っている。企業は新たな規制や政策の導入を織り込み、「2度目標」に沿った戦略作りが求められる。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのイザディ・アリ日韓代表は「誰が米大統領でも流れは変わらない」。ルール作りに参加する東京海上ホールディングスの長村政明CSR室長は「企業にはリスクだけでなくビジネスチャンスがある」と指摘した。
国内企業の取り組みとして、積水ハウスの石田建一・環境推進部長は「排出ゼロ住宅」を紹介。三井住友銀行の馬場賢治・グループ長は、再生可能エネルギーなどの環境技術に融資するための債権「グリーンボンド」の取り組みを説明した。トヨタの水谷英司部長は「2050年に新車からの排出90%削減」などを掲げた「トヨタ環境チャレンジ2050」を紹介した。