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焼損材でW杯規格4990席 山林火災のスギ生かす 釜石鵜住居復興スタジアム/岩手県

 来秋のラグビーワールドカップ(W杯)の会場となる釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)で、6千席の座席の取り付け作業が終盤を迎えている。うち8割以上の4990席が釜石市平田で起きた山林火災の焼損材を活用した木製シートだ。
 昨年5月の山林火災では413ヘクタールもの森林を焼失し、地元林業に大きな打撃を与えた。釜石地方森林組合の久保知久組合長らによると、火災前からスタジアムなど公共施設建設の際に地元森林資源の活用を市に提案してきたが、火災後に大量の焼損材が出たため「加工・工夫することで何とか林業復興に役立てないか」と模索し続けた。
 組合では地元の製材所や家具製作会社にも働きかけW杯会場の規格に合うウッドシートを試作。焼損材の多くが表皮が焼けていただけで、通常のスギ材を使ったものと比べても「全く遜色のない製品」とプロが太鼓判を押した。約5千席分のシート製作に使用した丸太は50年生スギ800本。通常は買いたたかれる焼損材価格の1割以上高い計310万円で売却できた。

 ■廃棄後チップに
 野田武則市長も「世界からの来場者を、地元の木のぬくもりで迎えられる」と森林組合や地元企業の協力に感謝。木製座席の耐久年数は7年以上というが、入れ替え・廃棄の際には古い座席は木質チップ化する。「環境にやさしい素材」として地元でのバイオマス発電にも利用できる。
 7月末にスタジアムが完成したあと、1万席の仮設シートの取り付け工事が始まるが、市では仮設分についても、地元の焼損材の活用を検討しているという。

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