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木を使って守る生物多様性

森林総合研究所が10月24日に東京・新橋で開いた公開講演会「木を使って守る生物多様性」へ参加しました。使うために木を伐ると生き物のすみかが失われてしまうので、生物多様性に悪影響を与えると考えられがちです。ただし、国土の7割が森と言われる日本では、森林の4割は人工林すなわちスギやヒノキといった針葉樹の植林地です。その多くは戦後の拡大造林期に植えられたため、現在では樹齢50~60年程度の成熟した画一的な森が、かなりの面積で広がっています。

 

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●人工林の生物多様性について講演する森林総研の尾崎研一・研究ディレクター

一般に森林の発育は、幼齢、若齢、成熟、老齢の四つ段階に分けられます。そして生物多様性は幼齢と老齢の森林で高まるとされています。国土の多くを占める人工林ですが、登壇した森林総研の尾崎研一・研究ディレクターの説明では、木材生産のためには成熟期で伐出することが基本のため老齢林はわずかだし、最近は造林の機会が減って幼齢林も少ないため、日本の人工林の生物多様性レベルは低いということになります。

 

 

そこで、木を使いながら生物多様性を高めるには、まず成熟した人工林を伐った後に新たな植林を施して幼齢林を育成します。そうすることで、まだ木が小さな成長初期に明るい草原的な環境が維持され、危機的な状況にある多くの草地性の種が増えます。一方、収穫する成熟林の中から残す木を決めて、一部を老齢林に誘導します。老齢林にはさまざまな樹種による複雑な空間が生じますし、構成する大木や古木には樹洞などができて、さまざまな生物に営巣場所等として利用されるのです。

 

こうした取り組みは、すでに各地で手掛けられ始めています。効果を上げるには、実施の上でさまざまな工夫が必要でしょうし、環境条件などの制約も受けるでしょう。それでも、木を使うことと生物多様性を守ることは、両立させられるというメッセージには心地よいものを感じました。実践の広がりに期待したいものです。

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