ブックガイド

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●新たな魚類大系統──遺伝子で解き明かす魚類3万種の由来と現在

宮正樹・著 慶應義塾大学出版会 本体2400円+税

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そんな本が、森林文化協会のブックガイドにふさわしいかどうかと、迷う必要はない。森を流れる河川や、その水がたまった湖沼にすむ淡水魚たちも、このストーリーには頻繁に登場する。「ウナギの祖先は深海魚だった」というのも著者らの研究成果であり、だからニホンウナギは今もマリアナ諸島沖にまで行って繁殖していることに合点がいく。従来、1種類と考えられていた日本のメダカは近年、キタメダカとミナミメダカの2種類に分かれると考えられるようになったが、見た目はそっくりな2種の分岐年代はせいぜい400万年前と考えられていた。それに対して、著者らの研究は1800万年前と大幅に古い推定年代を示して話題を呼んだ。実は国内にすむ他の動物群でも、同じ時期に分岐したと思われる例がある。

 

著者は、最近話題の環境DNAの研究にも取り組んでいる。地球環境や生物進化についての理解を深めるため、研究の第一人者の歩んだ歴史が参考になることは請け合いだ。

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