ブックガイド
森づくりの原理・原則 自然法則に学ぶ合理的な森づくり
正木隆 著 全国林業改良普及協会 本体2300円+税
お堅い教科書のようなタイトルとは裏腹に、業界用語を極力避け、森を人間にたとえるような柔らかい表現を多用して「森林の生き様」を伝える。森林総合研究所で研究に携わってきた著者ならではの着眼点で、多くの研究者が積み上げてきた森づくりの科学的根拠や経験則を整理した。
森づくりのモデルとして、計画的に天然林状態を創(つく)り出した「明治神宮の森」を挙げる。自然の仕組みに忠実に設計し、適切な樹種を選んだことや、途中段階・最終段階の「目標林型」を明確にしたことが成功のカギと説く。
ヒノキの成長曲線図が大きく修正されたことがある。基準や指針といった「定説」を疑う批判精神こそが、重要な原理・原則だという。入門書としても、森づくりの現場の指南書としても、森林管理に携わる行政への提言書としても役立ちそうだ。